研究課題
本研究計画の目的は、研究代表者が見出した、動物細胞に巨大な液胞を形成させる小分子有機化合物の作用機構を明らかにすることにより、液胞形成機構の解明を目指すものである。昨年度までの研究によって、本化合物による液胞形成にはエンドソームの同士の融合促進による肥大化が関与することが示唆されていた。本年度は、液胞膜の由来を間接蛍光抗体法を用いてさらに詳細に解析した。その結果、研究代表者の見出した化合物は、オートファジーをも誘導することが明らかとなった。オートファジーとは細胞内の大規模分解装置であり、飢餓状態をはじめとした様々なストレスで引き起こされることが知られている。オートファジーは、LC3タンパク質の特異的な脂質付加を介したプロセシング、及び同じくLC3タンパク質のオートファゴソームと呼ばれる独特な細胞内小器官への局在によって特徴付けられる。本化合物によってもこれらがともに観察されたことから、本化合物はオートファゴソーム形成を誘導していると結論した。さらに、本化合物によるオートファゴソームとエンドソーム双方への影響を明らかにするために、抗LC3抗体と抗EEA1抗体を用いた二重染色を試みた。その結果、両タンパク質は局在を共にしていることが観察された。このことは、オートファゴソームと初期エンドソームの融を示唆するものである。上記のことは、本化合物がエンドソーム同士のホモジニアスな融合のみならず、エンドソームとオートファゴソームの融合というヘテロジニアスな膜融合をも調節している可能性を示すものである。
すべて 2009
すべて 雑誌論文 (1件) (うち査読あり 1件)
Chemistry and Biology 16
ページ: 882-892