研究課題
申請者は、一万二千個よりなる化合物ライブラリーをスクリーニングすることによって、細胞内に巨大な液胞を形成させる化合物を見出した。そこで本研究の目的は、この化合物の作用機構を明らかにすることによって、液胞形成のメカニズムを解明することである。昨年度までの研究によって、本化合物による液胞形成の過程にはエンドソームの融合が促進されている事、及びオートファゴソーム形成が関与していることが明らかとなった。そこで本年度は、本化合物とオートファゴソーム形成との関係に着目して研究を行った。オートファゴソームの形成には、オートファジー関連遺伝子の一つであるLC3タンパク質のプロセシングを伴うことが知られている。そこで本化合物によるLC3の動態への影響を調べたところ、顕著なプロセシングを受けると共に、そのタンパク質量も増大していることが分かった。本化合物の処理と同時に、タンパク質合成阻害剤であるシクロヘキシイミドで細胞を処理しておいてもプロセシング自身は観察されたことから、タンパク質量の増大による二次的な影響ではなく、本化合物の影響でLC3のプロセシングが起こると考えられた。さらに、LC3タンパク質量の増大の原因を明らかにするために、そのmRNAをRT-PCR法によって確認したところ、本化合物処理によってLC3のmRNA発現量も増大することが明らかとなった。以上の結果から本化合物は、LC3遺伝子のmRNAの発現を増大させることによってLC3タンパク質の量を増やすと共に、このタンパク質のプロセシングも促進させることによってオートファゴソーム形成を促している可能性が示唆された。以上の成果は液胞形成にとどまらず、オートファジー分野の研究にも重要な知見を与えることができると期待される。
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すべて 雑誌論文 (2件) (うち査読あり 2件)
Oncotarget
巻: 1 ページ: 252-264
J.Biol.Chem.
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