研究概要 |
植物微細藻類である新種渦鞭毛藻,ヘテロカプサ・サーキュラリスカーマ(Heterocapsa circularisquama)(以下,ヘテロカプサ)は,瀬戸内海など日本近海で発生する赤潮プランクトンであり,カキや真珠貝などの二枚貝に対してのみ特異的に毒性を示す。本研究は,ヘテロカプサの毒性物質および構造活性相関を基に創製した機能性低分子をプローブとして特異な生理活性の発現メカニズムの解明を目的して,以下の実験を実施した。 (1)構造活性相関に基づく活性発現に必須な化学構造の探索ヘテロカプサ藻体のブタノール可溶画分から,各種クロマトグラフィーを用いて,二枚貝致死活性物質として分子量約2,000の活性化合物,HTX-Bを単離した。このHTX-Bの官能基を調べた結果,分子中に4個のメチル基,2個の4級炭素,そして3個の二重結合が存在していることがわかった。さらに,3個の二重結合のうち,2個は末端二重結合であった。現在,これら二重結合に対して,トレーサーを導入した化合物の精製を行っている (2)立体化学を制御したトレーサー化合物の合成ヘテロカプサ藻体が産生する毒性物質に含まれる水酸基数を,核磁気共鳴スペクトルを用いて調べた。その28個の水酸基が存在することがわかった。水酸基の立体化学を制御したトレーサー分子の創製のために,アミノ酸,プロリン誘導体を有機触媒の開発を行った。現在,合成した有機触媒を用いて,毒性物質の部分構造を有する小分子の合成を行う予定。
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