研究概要 |
新種渦鞭毛藻,ヘテロカプサ・サーキュラリスカーマ(Heterocapsa circularisquama)(以下,ヘテロカプサ)に含まれるカキや真珠貝などの二枚貝に対して毒性を示す物質の構造と活性相関を行うために,ヘテロカプサに含まれる毒性物質の単離・精製ならびにその構造解析を実施した。また,毒性物質の部分構造を構築するために,立体選択的な反応を触媒する有機触媒の創製と触媒能の検討を行った。 (1)構造活性相関に基つぐ活性表現に必須な化学構造の探索 ヘテロカプサに含まれる毒性物質として,分子量約2,000の化合物(HTX-B)と分子量約5,000の化合物(HTX-A)を対象化合物として,それらの効率的な単離・精製法の構築を行ってきた。特に,HTX-Aに関しては,有機溶媒に対する溶解性を利用することによって効率的に精製できることを見出した。今後,NMRおよびMSによる解析の他分子内にある二重結合に対する解裂反応による小分子への誘導等を行うことによって,全構造の解析を行う予定である。 (2)立体化学を制御した小分子の合成 毒性物質の分子内に多く含まれる水酸基の立体化学を決定する目的で有機触媒を用いた直接的アルドール反応を利用した効率的な小分子の創製を検討した。これまでに,様々な官能基で修飾することができる多官能基を有するβ-ホモプロリン誘導体を有機分子触媒として創製した。この新規有機触媒の反応性を検討した結果・水素結合を利用した立体制御を期待して導入した水酸基の立体化学が,アルドール反応の収率ならびに不斉収率に寄与しすることを見出した。また,反応の立体化学を規定する反応中間体を量子計算化学を利用して解析した。今後,反応溶媒の検討を行うことによって,より効率的な有機分子触媒の創製を行う予定である。
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