研究課題/領域番号 |
20611013
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研究機関 | 徳島大学 |
研究代表者 |
ユースフ シセ 徳島大学, 疾患酵素学研究センター, 科学技術振興研究員 (80437649)
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研究分担者 |
木戸 博 徳島大学, 疾患酵素学研究センター, 教授 (50144978)
矢野 仁康 徳島大学, 疾患酵素学研究センター, 准教授 (40304555)
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キーワード | インフルエンザウイルス / ジクロフェナクナトリウム / ウイルス放出阻害 / インフルエンザ脳症 / 解熱剤 |
研究概要 |
高熱を発症している小児を前に医者は、どのような解熱剤を使用すべきか迷う。解熱効果の強いアスピリン、ジクロフェナクナトリウム、メフェナム酸は、ライ症候群として致死性脳症を起こす危険性から小児では禁忌とされ、我が国では解熱せずに放置している現状にある。しかし、我々が最近明らかにしたように、高熱持続による酵素の熱失活を原因とするインフルエンザ脳症(熱不安定性フェノタイプ症)が明らかになり、これらの患者では解熱剤を使用しなければ極めて危険となる。 本研究では、1)ライ症候群を起こす解熱剤と、起こさない解熱剤の細胞障害性の違いを分子レベルで検討した。2)安全性の高い解熱剤とライ症候群を発症する解熱剤の違いを、血液脳関門を焦点に血管内皮細胞の膜透過性を指標に検討した。3)上記の結果を基盤に、安全性の高い解熱剤化合物の検討を進めた。 検討の結果、ライ症候群で見られる全身の浮腫、脳浮腫の発症には、血管内皮細胞の膜透過性の亢進が関与しているが、ジクロフェナクナトリウム等の解熱剤が関与するナトリウム、クロールの細胞膜透過性がこの発症機序に関与していることが明らかとなった。鎮痛効果には、細胞膜でのナトリウムイオン、クロールイオンの透過性が関与するが、これらイオンの透過性が、細胞内微小骨格の変動を導き、その結果がウイルスの細胞膜からの放出に影響していることが推定された。インフルエンザウイルスの細胞膜からの放出阻害は、ウイルスの細胞内の蓄積を導き、ウイルス蛋白質の細胞内蓄積は、細胞死の原因の一つになると推定している。
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