研究課題/領域番号 |
20611015
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研究機関 | 慶應義塾大学 |
研究代表者 |
梅澤 一夫 慶應義塾大学, 理工学部, 教授 (70114402)
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研究分担者 |
須貝 威 慶應義塾大学, 薬学部, 教授 (60171120)
阪埜 浩司 慶應義塾大学, 医学部, 講師 (70265875)
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キーワード | DHMEQ / NF-κB / 卵巣癌 / 分子デザイン / 腹腔内播種 / 浸潤 / 転移 / 抗癌剤 |
研究概要 |
卵巣癌細胞の培養細胞でのNF-κBおよび浸潤能と浸潤機構を調べた。卵巣癌細胞としてヒト卵巣低分化明細胞腺癌ES-2細胞およびヒト卵巣明細胞腺癌RMG1細胞を用い、ES-2細胞はTNF-αによりNF-κBの活性化が誘導され、RMG1細胞では恒常的に活性化されていた。(-)-DHMEQはそれを抑制し、さらにいずれの細胞の浸潤も抑制した。RMG1細胞においてIL-6およびIL-8産生は(-)-DHMEQにより抑制されなかった。浸潤に関与するMMP-9とuPAの発現は(-)-DHMEQにより抑制された。特に、ケモカインレセプターCXCR4の発現を抑制し、中和抗体を用いた実験でCXCR4が浸潤に重要であることもわかった。このように卵巣癌の浸潤にNF-κBが関与すること、特に下流のCXCR4が重要なことがわかった。(梅澤)一方、水溶性誘導体合成の前段階で、光学活性(-)-DHMEQの新しい、より効果的な合成法として本年度はまず不斉合成を基盤とする新ルート確立に取り組んだ。Taylorの方法でDHMEQ中間体の不斉エポキシ化をする反応を行い部分的に光学活性な化合物があられた。(須貝)さらにin vivo抗癌活性評価系に関してRMG1およびES-2をBALB/C nu/nuマウスに腹腔内投与及び皮下注射により移植し、腫瘍形成時期・部位などについて検討を行った。どちらの細胞株も、マウス腹腔内に播種を来し腹水を産生した。肉眼的に明らかな腫瘍形成は、RMG1では移植の約3週間後、ES-2では約1週間後から認められた。皮下移植においてもどちらの細胞株も約1週間後に注射部位に一致して触知可能な腫瘍を形成した。このように卵巣癌を用いた動物実験系が確率された。DHMEQの抗癌活性はまだ得られていない。(阪埜)以上のように(-)-DHMEQの臨床応用に向けて、腹腔内薬物投与が比較的一般的な卵巣癌は重要な標的であり、細胞、合成、動物を用いた実験で目的に近づく成果が得られた。
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