オーキシンは、植物の分化、成長を調節するホルモンである。2006年度、シロイヌナズナからオーキシン受容体が、F-boxタンパクであるTIR1と同定された。さらに、2007年度、TIR1受容体-オーキシン複合体の結晶構造が報告され、分子レベルでのオーキシンの作用機構が明らかとされた。2008年度、我々は、TIR1受容体とアンチオーキシンプローブの結晶構造解析を報告した。その結晶構造から、新たに、活性の高い新規アンチオーキシンプローブの分子設計と合成を行った。合成した23種のプローブについて、各種アンチオーキシン活性を検討した。その結果、設計したアンチオーキシンプローブは、TIR1受容体にオーキシンと拮抗的に結合し、植物での遺伝子、組織、個体レベルにおいても、非常に強いアンチオーキシン活性を示す化合物が得られた。また、TIR1受容体の結晶構造に基づいて、分子ドッキングプログラムを用いたインシリコのバーチャルスクリーニングを試みた。その結果、インシリコ・スクリーニングにおいて、同定された化合物のアンチオーキシン活性を検討した結果、いくつか高い活性を示す化合物が得られた。現在、これらの化合物の詳細な構造活性相関を検討している。
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