本研究は、新しい細胞膜エストロゲン受容体の基盤的研究を行い、同時にその受容体に作用する化合物のケミカルライブラリーの作成を試み、副作用の少ない新たな女性ホルモン代用治療薬を探索する。 本年度は、新しい細胞膜エストロゲン受容体に作用する植物性エストロゲンの探索とその細胞機能への役割について検討した。その結果、大豆成分のダイゼインや赤ワイン成分のレスベラトロールが細胞膜エストロゲン受容体を介して副腎髄質細胞でのカテコールアミン生合成を促進した(研究発表を参照)。この促進作用にextracellular signal-regulated protein kinase(ERK)が関与していることを示唆した。さらに、大豆のもう1つの成分であるゲニステインは、ノルエピネフリントランスポーター(NET)機能を促進した。この促進作用は、[^3H]NE取り込みでのVmaxを増加し、Kmに変動を与えなかった。又ゲニステインは、NETを一過性に発現させたCOS-7細胞において[^3H]nisoxetin結合を促進し、その時Bmaxを増加させ、Kdに変動を与えなかった(論文投稿中)。一方、種々の刺激を細胞に与えて細胞膜エストロゲン受容体の変動を起こし、その時の細胞内での遺伝子のdifferential display microarrayによるクローニングを試みたが、現在のところ成功していない。最後に、昨年11月に開催された第6回国際中医薬学術大会(中国天津市)に参加し、天津中医薬学院大学との連携による中国薬草からの植物性エストロゲンの探索を開始した。
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