本研究は、新しい細胞膜エストロゲン受容体の基盤的研究を行い、同時にその受容体に作用する化合物のケミカルライブラリーの作成を試み、副作用の少ない新たな女性ホルモン代用治療薬を探索する。以下に本年度の研究成果について要約する。 1)副腎髄質細胞膜に存在する全く新しいタイプのエストロゲン受容体の分子クローニングを行った。しかしながら、その受容体を分離精製する従来の生化学的なアプローチでは、細胞膜から可溶化するとその活性を失うために現時点で成功していない。そこで次年度は、細胞を各種刺激後、その細胞膜のエストロゲン受容体の変動をDNAマイクロアレイ法により解析同定する計画である。一方、副腎髄質の細胞膜にあるエストロゲン受容体の薬理学的解析を行うために、従来知られている核内エストロゲン受容体(ER-α及びER-β)の各々選択的作用薬を用いて現在、解析中である。 2)大豆の成分である植物性エストロゲンのゲニステインが、ノルエピネフリントランスポーター(NET)活性を増加させた。この結果は、ゲニステインによる交感神経系への抑制作用が示唆され、抗ストレス効果が期待された(発表論文1)。さらに、蜜柑の果皮成分であるノビレチン(論文revise中)やサルビア科植物のダンセン(発表論文3)やZuojin Wan(中国薬草)(発表論文2)についても同様にカテコールアミン分泌刺激反応に対して抑制作用があり、交感神経の抑制効果が期待される。
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