研究概要 |
【目的】糖鎖は特異的なタンパク質への結合親和性が低いと言われている.そのため,糖鎖の機能を解明する速度は,DNAや他の機能タンパク質の解明速度に比べるととても遅い.糖鎖は生体のあらゆる部位で特別な機能を発揮し,神経においてもガングリオシドやプロテオグリカンなどの糖鎖部分が,神経の分化・発達などの様々な機能を担っていると報告されている.その重要性は以前から指摘されており,生体内の糖鎖がどんなタンパク質と相互作用するのかを網羅的に解析する方法論が求められている. 申請者は従来法に比べ1000倍以上の選択効率をもつ"フォトパニング法"を開発し,効率的なタンパク質の解析法を確立した.この方法を糖鎖結合タンパク質のパニングに適応できるように改良すること,そして得られた糖鎖結合タンパク質情報から神経における糖鎖の役割解明を目指すという2つが本研究の目的である. 【本年度の成果】(1)フォトパニング法を低親和性の糖鎖へ対応させるためには,固定担体の使用量を大幅に削減する必要がある.ラクトース糖鎖をリガンドに,ガレクチン(ガラクトース結合タンパク質)提示ファージの回収実験を通じて,限外濾過フィルターで分別する方法が有効であることを確認した.(2)脂質二重膜上でガングリオシドとβアミロイドペプチドの相互作用をAFM(原子間力顕微鏡)で解析した.あるガングリオシドを含んだ脂質上ではアルツハイマーアミロイドペプチドが,特異的な構造をとることを見出した. 【まとめ】本年度は糖鎖に結合するタンパク質の解析法の基礎構築,および神経疾患に関わると考えられる重要糖鎖について知見を得ることができた.
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