研究概要 |
特異的なタンパク質への結合親和性が低いリガンドを効率的に解析する方法論の開発は難しい.特異的な親和性が弱いと非吸着との区別が難しいためである.糖鎖は生体のあらゆる部位で特別な機能を発揮し,神経においてもガングリオシドやプロテオグリカンなどの糖鎖部分が,神経の分化・発達などの様々な機能を担っているが,特異的な親和性が低いために効率的な解析が難しい.申請者は新しい構造の糖鎖リガンドを合成し,低親和性対応型のフォトパニング法の開発を試みると同時に,神経細胞に関わる糖鎖とペプチドとの相互作用を解析した. 1.ラクトースをモデルに天然と同じ構造をもつ閉環型糖鎖光反応性リガンドの合成法を確立し,実験に十分量の新しい構造をもつリガンドを作製した.このリガンドの機能性を調査するため,糖鎖を特異的に認識する3種類のレクチンタンパク質を用いて,旧式のリガンドと結合機能を比較した.その結果,新型のリガンドでのみレクチンタンパク質との特異的な結合が確認され,その機能性の高さが実証された.糖鎖に結合するタンパク質を網羅的に解析するためのスクリーニング法へ適応するためには,糖鎖の親水性と光反応基の疎水性との相性を改善する必要があり,さらなる改良が求められることが明らかになった. 2.脂質膜上でのガングリオシド(糖鎖)とβアミロイドペプチドとの相互作用の様子をAFM(原子間力顕微鏡)で解析した.その結果,脂質のみと比べてガングリオシドを添加すると特徴的な凝集が見られることが明らかになった.
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