研究概要 |
本研究では、スプライシング因子を標的とする低分子化合物Spliceostatin A(以下SSAと表記)による分裂酵母全タンパク質の細胞内局在(ローカリゾーム)に対する影響を網羅的に解析する「ケミカルローカリゾーム」解析を実施する。これは、「局在制御」という観点から新たな機能を導きだす極めて有効なスクリーニング法といえる。本年度は、まず、SSAをはじめとする様々な薬剤に感受性となるよう薬剤排出ポンプをコードする遺伝子を破壊した分裂酵母株に約5,000個のYFP融合型分裂酵母遺伝子を導入したライブラリーを構築した。次に、このライブラリーの各細胞株を発現誘導培地で一晩培養し、5μg/mLのSSAで6時間処理後、YFP融合型タンパク質の局在を蛍光顕微鏡下でコントロール(溶媒=メタノールのみで処理した細胞)と比較した。これまでに、約4,000個のタンパク質について局在観察を終えたが、局在変化が見られたタンパク質の中には、リボソームタンパク質が多ぐ含まれており、また、タンパク質の核一細胞質間輸送を担う輸送担体も存在していた。近年、スプライシング因子がスプライシング以外にもテロメア長の維持やRNAi機構によるサイレンシングにも関与していることが報告されている。本研究結果からも、スプライシング因子がリボソーム生合成や核ー細胞質間輸送に関与するという、これまで報告されていない新たな機能を呈示できる可能性がある。
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