大型放射光施設Spring8と、理研のSCSS試験加速器を用いて、X線やEUVレーザーにより励起された分子・クラスターについて電子・イオン運動量計測実験を行った。放射光X線を用いた実験では、主に臭素を含む芳香族分子の実験を行い、13.5keVのX線照射により臭素原子上で生成した電荷の分子内での移動距離などについてイオンの多重同期計測を併用した電子-イオン同期計測方により評価を試み、π電子の局在性の違いによる電荷移動度の違いを示唆する結果を得た。また、この時同時に得られるイオンの3次元運動量の情報から、分子の形状と分子内の電子移動度の関係についても検討を行った。 EUVレーザー実験では、主に希ガスクラスターを試料として、20eV程度の真空紫外光による著しい多光子イオン化を観測した。また、イオンの運動量計測から多光子イオン化過程とクラスターサイズ・光強度の関係を評価し、イオン化過程の素過程について微視的な理解を与えるモデルを提出した。 本年度得られた成果を元にして、平行に設置された2台のディレイラインアノード検出器と、複数のMCP検出器からなる、新たな電子・イオン・X線同時計測分光装置の設計を開始した。
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