研究概要 |
ペロフスカイト型希土類マンガン酸化物は、超巨大磁気抵抗効果を示すことで知られている。本研究では、γ線摂動角相関法によって、極微量の不純物プローブ原子を試料中に導入し、プローブ周辺の局所的な電磁場を直接観察することを目的として実験を行った。 平成20年度は^<111>Cdプローブ原子の導入法としてイオンビームのインプランテーション法を採用した。固相反応で合成したLa_<0.7>Ca_<0.3>MnO_3に核反応生成物(^<111>Sb,^<111>Sn,^<111>In)のビームを照射した後、試料を焼鈍してγ線摂動角相関測定を行ったところ、スペクトルは単一の電場勾配を仮定して解析できることが分かったが、この場合プローブがビームの照射によって生成された格子欠陥を捕獲している可能性がある。従って平成21年度は、試料に塩化インジウム(^<111>In)溶液を滴下し、焼成後、^<111>Cd(←^<111>In)をプローブとするγ線摂動角相関測定を行った。得られたスペクトルはビーム照射によって得られたスペクトルをよく再現していることが分かり、ビームによって生成された可能性のある格子欠陥は、焼鈍によって解消できることが分かった。 しかし上記の両方法において、磁気転移点前後でスペクトルに顕著な変化はなく、内部磁場の影響が観測されなかった。この結果は^<140>Ceをプローブとする先行研究のものと相反しており、大変興味深い。非磁性のプローブが与える特異的な情報である可能性がある。今後、^<111>Cdプローブの占有位置にを電場勾配と非対称パラメーターの値から特定し、スペクトルの温度変化と磁気転移との関係について考察する予定である。
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