研究概要 |
ペロフスカイト型希土類マンガン酸化物は、超巨大磁気抵抗効果を示すことで知られている。本研究では、γ線摂動角相関法によって、極微量の不純物プローブ原子を試料中に導入し、プローブ周辺の局所的な電磁場を直接観察することを目的として実験を行った。 はじめに^<111>Cdプローブ原子の導入法としてイオンビームのインプランテーション法を採用した。固相反応で合成したLa_<0.7>Ca<0.3>MnO_3に核反応生成物(^<111>Sb, ^<111>Sn, ^<111>In)のビームを照射した後、試料を焼鈍して摂動角相関測定を行ったところ、スペクトルは単一の電場勾配を仮定して解析できることが分かったが、この場合プローブがビームの照射によって生成された格子欠陥を捕獲している可能性がある。このことを確認するため、試料に塩化インジウム(^<111>In)溶液を滴下し、焼成後、^<111>Cd(←^<111>In)をプローブとする摂動角相関測定を行った。得られたスペクトルはビーム照射によって得られたスペクトルをよく再現しており、ビームによって生成された可能性のある格子欠陥をプローブが捕獲しているのではないことが示唆された。 しかし上記の両方法において、磁気転移点前後でスペクトルに顕著な変化はなく、内部磁場の影響は観測されなかった。この結果はLaサイトに存在する^<140>Ceをプローブとした先行研究の結果と相反しており、非磁性のプローブに特有な情報が得られている可能性がある。従ってさらに本研究では、La(Ca)サイトを置換すると考えられる^<111>Cd(←^<111m>Cd)をプローブとして試料に導入して摂動角相関測定を行ったが、転移点前後でスペクトルに変化は見られなかった。この結果から、^<140>Ce核と異なり、La(Ca)位置を置換した^<111>Cd核は、Mn由来のtransferred fieldの影響を受けていないことが分かった。
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