粥状動脈硬化症の重症病変に対する低侵襲な治療法として、波長5.75μmのレーザー用いた血管形成術の開発を行っている。平成20年度は、WHHLMIウサギ(動脈硬化発症ウサギ)胸部大動脈に対する波長5.75μmのナノ秒パルスレーザー照射効果について検討を行った。ナノ秒パルスレーザーによるアブレーションは非熱的な効果が顕著であるが、照射点の極近傍には熱凝固層が生成される。熱凝固層の抑制は治療の低侵襲化にとって重要である。粥状動脈硬化内膜にレーザー照射を行い、内膜に形成される熱凝固層の組織学的な評価をHE染色にて行ったところ、熱凝固層が極めて少ないことが分かった。よって、波長5.75μmのナノ秒パルスレーザーは熱的な副作用を極めて少なく、粥状動脈硬化病変を除去できるということである。また、マイクロ秒パルスレーザー照射により粥状動脈硬化病変の主成分であるコレステロールエステルがコレステロールと脂肪酸に分解することが我我の先行研究で確認されているが、ナノ秒パルスレーザー照射においてもコレステロールオレイトが分解するかどうか検証を行った。コレステロールオレイトに波長5.75μmのナノ秒パルスレーザー照射を行い、照射部を顕微フーリエ変換型赤外分光光度計にて分析を行ったところ、照射前後で赤外吸収スペクトルの変化は観測されたが、再現性が乏しいことが分かった。よって、波長5.75μmのナノ秒パルスレーザーは、分解効果を伴わず病変を除去することが示唆された。以上より、従来法より安全なレーザー血管形成術を確立することができることが分かった。
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