液体リチウムを用いた小型中性子源用の加速器ターゲットの検討を行った。100μm程度の液体リチウム層を安定に形成し、ビームによる熱を除去するシステムとして、流下液膜方式と円盤またはベルトによる液体リチウム層の引上方式を検討したが、液体リチウムの循環系がなく、機構的に簡便で安定した動作が期待できることから、円盤による引き上げ方式を採用した。 金属リチウムの自由界面に表面がリチウムによく濡れる円盤を設置し、それら回転させることによって付着した液膜を自由界面から引き上げ、円盤に付着したリチウム層にビームを照射する事を想定して試験装置を製作した。このような液体の引き上げは、溶融メッキや潤滑で用いられるが、液体と固体表面の吸着力に支配される流れ現象であり、流体力学だけでは予想できないため、液体リチウムを用いて実際に試験を行う必要がある。冷却は液溜りで行え、小型装置の製作が可能である。 直径100mm、厚さ10mmの銅製円盤の軸に真空用モータを取り付け、液溜に挿入して回転させる構造とし、装置をグローブボックス内に設置してグローブボックスのガラス窓からレーザー距離計で液膜の無い時とある時の距離を測定してその差から液膜厚さを測定する。予備実験として水と溶融鉛ビスマス合金で測定を行い、液膜が形成でき膜厚が測定できること、円盤の回転数を変化させることで、ある程度膜厚を制御できることを確認した。平成22年度には、リチウムを用いて実験を行う予定である。
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