レーザー治療における対象生体組織の識別が、レーザー打診法によって可能になるかどうかを調査した。レーザーはパルスおよび連続発振CO_2レーザーである。その成果を次の通りまとめた。(1)各種生体組織の組織標本を作製し、比較対象とするベースを蒐集した。紫外から赤外に及ぶ光吸収スペクトルを測定し、整理した。タンパク質のレーザー照射による影響を調査した結果、結合状態・分子量の異なるコラーゲンとゼラチンではその変性状態と影響範囲、光吸収スペクトルへの影響が異なった。(2)レーザー誘起音発生機構を解明するため、高速度CCDカメラによる観察結果を精査した。その結果、CO_2レーザーは水分に強く吸収され、生体組織中の水分が爆発的に蒸発し、次いで気泡を組織内に形成し、その気泡が破裂する際は音速を越える速さで組織が噴出する。(3)本研究ではあらゆる全ての生体組織のレーザー誘起音特性データを蒐集・解析し、データベースを構築する必要がある。現在までに20Hz~70kHzの超音波センサーを用い、12種の組織の誘起音データを収集した。(4)レーザー誘起音波形は生体組織の種類やその状態によって異なることが明らかになった。(5)数10kHzを越える超音波を計測できるトランスデューサーはその周波数範囲が限局している。そこで、可聴域からMHzオーダーまでの誘起音を計測するため、赤色レーザーを試料表面に照射し、その反射光からCO_2レーザー照射時に発生する音による表面振動を捉えることを試みた。その結果、熱弾性波を捉えることはできたが、数100kHz以上の振動を捉えることはできなかった。
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