レーザー誘起音の情報が、生体組織の識別と、その状態のモニタリング情報となりうることは前年度までに明らかにした。今年度は生体組織の状態(水分量、凝固・炭化の程度など)と誘起音情報との関連を詳細に調べた。用いたレーザーは光波長10.6μmのCO2レーザーである。その結果、レーザー照射部位の水分量によって、誘起音の音圧レベルが異なることが確認された。したがって、誘起音情報から照射部位の水分量のモニタリングが可能である。レーザー照射によって凝固あるいは炭化した部位は水分量が異なる上、誘起音の音圧波形にも違いが見られることから、凝固あるいは炭化の程度も推量できることが分かった。音響測定ではノイズと信号との比(SN比)が問われる。誘起音の周波数特性を調べた結果、ノイズの周波数は10kHz以下の低周波数帯に存在し、信号の周波数帯域はこれ以上であることから、SN比は100倍以上であることが分かった。数10kHzを越える超音波の測定は既存のトランスデューサーでは困難である。そこで、赤色レーザー(He-Ne、光波長633nm)を用いて、レーザー誘起音による表面振動を捉える実験を試みた。その結果、100kHzオーダーの超音波振動を捉えることができた。併せて、熱弾性波の信号も捉えることができた。この結果は広範囲の周波数帯を検知できるシステムが構築できることを示唆している。レーザー治療機器の高機能化システムの実現に近づいたと考えられる。
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