本年度は、昨年度までに完成させた光伝導スイッチに光ファイバを接合することを中心的に行った。適当な治具を作成し、固定した光伝導スイッチに対して光学顕微鏡下で光ファイバを光伝導スイッチに電極中央に移動させ、先の光学接着剤を光ファイバ周辺に滴下した。光のロスを極力減らすために、接着剤には紫外線硬化タイプの光学接着剤を用いた。結果、物理的な接着には成功したが、問題点が幾つか明らかになった。一つは接着剤が光ファイバのコア部分に流れ込んでしまうと、接着剤が光学的に透明にもかかわらず、大幅に光電流が下がり、使い物にならない点である。また光ファイバの中心と光伝導スイッチの中心を幾何学的にかなり正確に合わせても、レンズ系で集光した場合に比べてその光電流が期待されたレベルまで行かない場合が多いことが分かった。これらの問題点を回避するために今後、フェルールと呼ばれる光ファイバ素線の先端をカバーできる治具を利用し、接着剤の流れ込みを防止すると共に、より精度の高い接着位置調整の方法でファイバ型光伝導スイッチの高性能化を試す。また今年度は、問題となっていた光ファイバ端の反射に伴うフェムト秒レーザーの不安定化を回避するために、ファラデーアイソレーターを導入し、光伝導スイッチ手前までのコンパクトな光学系、分散補償系と合わせ、1m光ファイバ端での光パルス幅は概ね入射パルス幅と同程度にできることを確認した。来年度は、より長い光ファイバ(5m程度)での測定及び、光強度依存性に関する測定を早期に行い、ファイバ型光伝導スイッチによるテラヘルツ発振検出測定の完成を目指す。
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