研究課題
低線量放射線の影響解明や難治性がんの高度治療法の開発を目指して開発が進められてきた、これまでのマイクロビームでの生物照射では、細胞一つ一つを撃ち分けることを主な目的としていた。しかし、近年の分子生物学的知見から、細胞内小器官を重イオンマイクロビームで照射し、その機能を解明する細胞内小器官を狙ったラジオサージェリー技術が求められている。そこで、重イオンマイクロビーム装置を用いて細胞小器官を狙い撃ちするラジオサージェリー技術を開発することを目的に、平成20年度は重イオンマイクロビーム装置制御ソフトウェアの開発を行い、平成21年度には、照準する細胞位置を、細胞染色画像から高精度に抽出することができる画像解析用コードの開発を実施するとともに、開発したソフトウェアを用いた、ヒト子宮頚癌由来培養細胞への集束ネオンビームによる自動照準照射実験を実施した。平成22年度は、これらに続き、集束ネオンビームによる自動照準照射実験で細胞核を狙って照射したヒト子宮頚癌由来培養細胞において、照射によるDNA損傷生成が認められるかの検証を実施した。検証は、照射によって生じることが予想される、DNA二重鎖切断のマーカーであるリン酸化ヒストンH2AXに特異的なモノクローナル抗体を用いたin situ免疫染色でDNA二重鎖切断の細胞内局在を可視化することで行った。その結果、照射された細胞では、リン酸化ピストンH2AXの生成が検出され、その位置は、イオン飛跡検出プラスチックCR-39で物理化学的に検出したイオン飛跡位置とよく合致していた。この結果から、開発したソフトウェアを用いた、集束式重イオンマイクロビームによる細胞への自動照準照射で、任意の細胞内の任意の位置に損傷を与えることが可能であることが確かめられた。
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JAEA-Review 2010-65, JAEA Takasaki Annual Report 2009
ページ: 86-86