研究課題
低エネルギ直中性子は、物質透過能力、水素等の軽元素識別能力、同位体識別能力、磁気解析能力等の他に無い優れた特徴を持つ物質科学、生命科学における不可欠な構造解析プローブである。しかし、利用できる中性子ビームの輝度は、大強度中性子施設といえども放射光施設等に比べて絶対的に不足しており、このことが中性子の適用範囲に制限を与えている。中性子の幅広い分野での利用を可能とするためには、中性子ビームを高精度かつ高効率に制御する中性子光学技術が不可欠な要素となる。我々は六極磁場が中性子の高精度かつ高効率な制御に極めて有効であることを最近の研究から見出した。そこで、本研究課題では、複数の六極磁石を直列配置した多重連結磁石を構成し、これにより広い波長帯域の白色中性子ビームを高精度かつ高効率に集光する手法を世界に先駆けて開拓することを目的とする。平成22年度は、前年度までに六極磁石間に挟む磁場接続コイルと中性子スピン反転器をJ-PARCの大強度パルス中性子源の中性子小中角散乱装置に搭載するための性能評価を行ったが、J-PARCの大強度パルス中性子源(25Hz)から発生する中性子パルスの第1フレームの最長波長である約8Aの中性子を約5,6mに置かれる超小角散乱高分解能検出器(位置分解能=0.5mm)に集光することで、中性子小中角散乱装置のq分解能をパルス中性子源におけるピンホール型の装置としてはこれまでにない約0.0005(1/A)まで向上できることを確認し、中性子小中角散乱装置の光学系の設計、建設に反映させることができた。また、同概念を定常中性子源において応用した中性子小角散乱装置で金属材料の構造解析を行い、そこで見出された必要q分解能も中性子小中角散乱装置の光学系の設計に反映させた。
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Tetsu-to-Hagane
巻: 96 ページ: 70-75