本研究では、パルスレーザーを用いた高温超伝導薄膜生成とプラズマカソードの研究を目的としている。Nbによる超伝導加速空洞は50MV/mと理論値の限界に達しており、またNb空洞はBCS抵抗による高周波損失のため液体Heに減圧冷却を行っても、実用周波数はせいぜい1.5GHz止まりという限界がある。MgB2は、酸化物高温超伝導体と比較して臨界温度、臨界磁場共に低いが、酸化物高温超電導体にないいくつかの優れた特性を有し、超伝導加速空洞の素材として有望であることが明らかになってきた。そこでNbに続く超伝導加速空洞材料としてMgB2が期待できると考え、高い加速電界と低い電力損失という高周波加速空洞に要求される最も重要な二つの特性を、MgB2が極めて高いレベルで充足していることを、実験レベルで証明することを目的としている。 昨年度は、前年度の空洞端板のみのMgB2成膜の結果に基づいて、6GHz帯の全面MgB2成膜用の空洞を複数製作し、空洞内全体の均一なMgB2成膜を行い、超伝導空洞としての性能の評価を行った。当初、加速電界方向に2分割した空洞にて成膜し、評価を行ったが、高周波電流の流れる接合面での成膜が難しかった。そこで2分割の空洞を切削後接合し、さらに4分割して個々に成膜を行う事で、接合面に高周波電流の流れない構造にして評価を行っている。成膜条件によって超伝導転移が確認できた物と、そうでない物があり、条件出しの精度を向上させるための試験を行っている。
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