第一原理バンド計算および、低濃度ドープ系やヘテロ接合へ拡張可能な第一原理電気伝導計算シミュレーションから、ドーピングによる電子物性発現と、対称ドーパンの元素特性あるいは化学結合の相関を明らかにし、稀少金属(レアメタル)と同等の性質をもつ安全・低コストの代替物質の設計を行う。H22年度は代替元素による透明電極材料として、ニオブ元素(Nb)ドープ・アナターゼ型酸化チタン薄膜(TNO;Titanium Niobium Oxlde)を中心としたシミュレーションによる伝導性の解析をターゲットとしつつ従来の単純なバンド計算による見積もりでなく、伝導特性や局所的不純物散乱効果をシミュレーションで見積もるための基礎理論構築と適用を目指した。 透明伝導体伝導度の不純物ドープ濃度依存性と、電気伝導経路での不純物電子由来の遷移や散乱効果を明らかにするため、非平衡グリーン関数法に基づいた、非平衡電流密度、即ち各サイト(原子)での局所電流ベクトルを定式化し、第一原理計算からこれを評価する方法を開発した。開発した方法をます、有機分子伝導系でテストし、分子の化学修飾や欠陥での電子散乱による電気伝導経路の変化を定量的に評価できることを確認した。これをもとに、Nb-VO構造(VOは酸素欠陥)のバルク安定構造(低濃度を再現すべく、大きなユニットセル構造を構築した上で)をモデル化し、電気伝導計算を行った。特に計算効率を向上させ、大規模シミュレーションを可能とするため、線形応答近似についても非平衡グリーン関数による計算から検証し、その有用性と適用限界電圧についても議論した。
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