(1) 溶融スラグに対するセラミックスの濡れ性、溶解・反応性調査とミクロ反応解析 クロムフリー不定形耐火物骨材の候補となるアルミナ、マグネシア、ジルコニアに対して、溶融スラグとの反応性、溶解性、濡れ性の詳細なデータを集積した。具体的には、溶解試験後の試験体とスラグについて、X線分析顕微鏡あるいは走査型電子顕微鏡により局所的な組成分析ならびに微構造観察を行い、溶融スラグと基材の間の反応挙動を調査した。その結果、次のことが明らかとなった。 ・アルミナは、濡れ性は低いが、スラグに対する溶解性が高い。また、アルミナ製品の種類によって反応性が異なる。アルミナ圧粉体はスラグに濡れやすく、密度の低い不定形耐火物に使用する際は要注意である。 ・マグネシアは、スラグに対して反応性が極めて高く、そのままの単一組成では使用できない。 ・ジルコニアは、スラグに濡れやすいが、反応性は低い。ただし、スラグのカルシウムがジルコニアに拡散する傾向がある。 (2) 熱力学的シミュレーションによる候補材料の探索 熱力学計算システム(Fact-Sage)により、各酸化物セラミックスと溶融スラグの反応性・溶解性を調査した結果、アルミナよりもジルコニアの方が反応性・溶解性が低いことを示した。製鋼用のマグネシア-アルミナ系耐火物の耐溶損性評価においても、熱力学計算結果は実験結果をよく反映しており、熱力学計算システムの有用性が示された。 (3) 耐火物組成の提案 以上の結果より、骨材候補としてアルミナ、ジルコニアがあげられる。不定形耐火物の結合材であるアルミナセメント硬化体は耐溶損性が極めて低く、耐溶損性の骨材とうまく組み合わせる必要があることが分かった。
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