研究概要 |
本研究では理論計算と分光実験を組み合わせた手法を用いてYPO_4:Zr^<4+>,Mn^<2+>の発光特性をより向上させ,希土類蛍光体に匹敵する特性を有するMn^<2+>蛍光体を新たに開発する.YPO_4:Zr^<4+>,Mn^<2+>をベースとした蛍光材料を新たに開発するためには,YPO_4結晶の格子間スペースをより狭くして格子間Mn^<2+>イオンの形成を抑制し,さらに共賦活剤により価数を制御してより多くのMn^<2+>イオンがY^<3+>イオンを置換できるようにしなければならない.そこで,Y^<3+>イオンよりもイオン半径の小さいSc^<3+>イオンを含むScPO_4を母体として選択し,その発光特性を測定したところ,YPO_4を選択した場合と比べて発光強度が倍増し発光色の純度もまた向上することを見出した.また,共賦活材を代表的な4価金属の中から数種類選択して,それらを共賦活した試料の発光特性を比較したところ、Zr^<4+>イオンを共賦活した場合がより良いことを見出し,その原因が価数変化および共有結合性に関係することを明らかにした.Sc^<3+>イオンよりも小さなイオン半径を持つ元素を含む母体においても現在は検討を行っている段階である. これらの実験的研究に加えて,代表的な二価マンガン蛍光体の電子状態を理論的に調べるための第一原理計算も平行して行い,予備的な結果ではあるが配位数と振動子強度の間において興味深い結果を得た.具体的には,配位数の少ない母体サイトに賦活された場合に振動子強度が格段に大きくなることを見出した.二価マンガンイオンを用いた蛍光体は,紫外から可視部の吸収が禁制遷移のために弱く,そのために用途が制限されている.もし,配位数の減少が可能な母体材料が設計できれば,二価マンガンイオンを用いた新たな蛍光体を開発することが出来ると期待され,今後はそのような母体を如何にして見出すかが鍵となる.
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