研究概要 |
前年度に見出した理論計算の結果に従って,低配位数の母体結晶中に二価マンガンイオンを添加した二価マンガン蛍光体の探索と特性評価を行った.Mg_2SnO_4:Mn^<2+>蛍光体は高輝度なMn^<2+>発光を示すことが知られていたので,これをベースとして蛍光体の開発および新しい合成法の開発を進めてきた.透明でありながら導電性を有するZn_2SnO_4を母体結晶として電子線励起用蛍光体の開発を行ったところ,著しい温度消光を示し,良好な結果が得られなかった.また,Mg_2SnO_4-Zn_2SnO_4混晶を母体として用いた場合でもその発光輝度はMg_2SnO_4:Mn^<2+>に及ばなかった.その原因を電子スピン共鳴測定により調べたところ,混晶中では,Mn^<2+>イオンがMg^<2+>サイトのみを選択的に占有するため,賦活が困難な状況にあることを見出した.この原因は現状において不明である.一方,高輝度な発光を示すMg_2SnO_4:Mn^<2+>蛍光体の蛍光体粒子の結晶性を様々な手法により評価した結果,電気炉で合成した場合には反応が不十分であり,結晶性が十分ではないことを見出した.このような難合成物質を作製する新しい手法を開発するために,ミリ波照射による電磁波加熱合成を試みた.電磁波加熱で通常使われるマイクロ波では局所的にプラズマが発生するため局部加熱が起こり良質な蛍光体粒子を得ることはできなかったが,ミリ波を用いた場合には球状で粒径の揃った蛍光体微粒子を得ることに成功した.マイクロ波に比べて波長の短いミリ波は粒子界面で強く吸収されるため,粒子同士の反応が内部に比べて界面近傍において進行するため,粒子形状やサイズなどの制御性が高く,高輝度高精細が要求されるディスプレィ用蛍光体の合成に実用できると期待される.
|