研究概要 |
本研究では, 旧来の科学技術可視化と情報可視化との間に横たわる無用な垣根を払拭し, 統計, 数学, 知識表現, 管理・発見技術, 知覚・認知科学, 決定科学等の知見を取り込みながら, 高度な対話的視覚インタフェースを用いた解析的推論によって, 巨大で動的, 時に自己矛盾を起こしているような複雑なデータから, 予期されることを検出するだけでなく, 予期できないことも同時に発見し, 時機を得た評価を効果的に共有して行動に移すための方法論として, 2004年に登場したVisual Analytics(VA, 視覚分析論)に関する集中的な研究開発を実施することを目的とする. 初年度の本年は, VAをメインテーマとする国際会議IEEE VAST 2008(H20. 10, オハイオ州コロンバス)への参加・情報収集も含め, VAの研究開発の現状を調査するのと並行して, 先行研究で開発した可視化ライフサイクル管理システムVIDELICETに, 代表的なVA技法を発展的に組み込み, VAソフトウェアのラピッドプロトタイピングを行うための基本設計と素材開発を実施した. VIDELICETシステムでは, 1990年にWehrendらが提案した技法分類Wehrend Matrixを用いて可視化目的をユーザに特定させ, それに合致する技法を推奨するインタフェースを実現している. 実際に, どのような可視化を行うかを表す動詞actionと, 何を可視化するかという目的語targetの組合せによって可視化目的を表し, それを達成できるような適切な可視化技法を関連付ける可視化の専門家の知識ベースが実現されている. そこで, VA技法が実際に使われる代表的な局面を上記の調査研究から抽出し, Wehrend Matrixのactionとtargetの語彙をより複合的な目的を有するVA向けに拡充した. また, 墜落事故等の予測に関連する後方乱気流の計測融合シミュレーションデータを素材として, VA技法に発展可能な新たな渦構造の視覚/力覚化手法を開発した.
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