本年度は、まずロバスト匂いセンシングの検討を行った。匂い濃度は大気中で不規則に変動するが、濃度変動により通常は匂い識別率は大きく低下する。そこで、レシプロカル方式による周波数の計数と短時間フーリエ変換を用いて実時間で水晶振動子ガスセンサ応答のスペクトル情報を得、それをニューラルネットでパターン認識する。温度や湿度変動下で動的に匂い濃度が変動する場合の匂い識別実験を行い、温湿度センサも用いると十分なロバスト性が得られることがわかった。それから、香りと映像をインターネットで遠隔地に伝えて、嗅覚ディスプレイで香りをコンピュータ画面上で映像を同時にリアルタイムで再生させる装置を試作し、さらにセンサの位置を遠隔ユーザから制御できるようにした。台車の上に匂いセンサに匂いを引き込むためのノズルを設置し、遠隔地のユーザがインタラクティブにセンシングの位置を制御する。センシング側からは匂いセンサによる匂い識別結果、濃度と映像ファイルをインターネットで再生側に伝送する。匂いセンサの情報と映像が同期するような工夫を施した。そして、国際会議 ACE (Advances in Computer Entertainment) 2008にて実演を行った。東工大で匂いと映像のセンシングを行い、国際会議会場(慶応大学)で嗅覚ディスプレイとパソコン画面により香りと映像の再生を行った。台車位置の操作は圏際会議場側で行うことができる。対象物はりんご、オレンジ(イミテーション)とグラスに入れたウイスキーである。ユーザはパソコン画面を見ながらこれらの対象物に近づけるようにを台車を移動させることができる。実際に会場で多くの来場者に体験してもらうことができた。映像に匂いが加わることにより臨場感が向上し、デモを成功させることができた。
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