120種の香り及び120色を、それぞれの印象によって分類した結果、香りは10クラスタ、色彩は9クラスタに分類された。 そこから30種の香りと18色を選出し、香り、色彩各々の印象構造次元を抽出すると共に、香りと色の調和感を双方から判断させ、両者の調和関係を定義した。結果として、香り、色彩の印象構造次元として共通しているのは、<MILD><CLEAR>の2因子であり、印象の類似した香りと色彩同士の調和感判断が安定して高かった。さらに、香りと色彩とを同一次元で捉える場合の印象構造次元を検討した結果、同様の2因子が抽出された。 次に、これらの2軸における香りと色彩の調和性を検討した。まず、香りに対する調和色の検討に関して、香りの因子得点を独立変数、香りに対する調和色、あるいは不調和色の選択率を従属変数として、それぞれ重回帰分析を行った。その結果、例えば赤は、香りの<MILD>因子の得点上昇に伴って調和色としての選択率が上昇し、得点が低下に伴い不調和としての選択率が上昇することが分かった。一方、色彩に対する調和香の検討として、色彩の因子得点を独立変数、色彩に対する香りの調和度評定値を従属変数として、重回帰分析を行った。その結果、例えばバニラの香りは、色彩の<MILD>因子の得点上昇に伴ってバニラの香りの調和度が上昇する結果となった。以上の結果を考え合わせ、香りと色の調和関係の定義と照らし合わせた。すると、いずれかの因子(あるいは両因子共に)と正の相関の認められた香りと色彩同士は調和性が高く、逆に正の相関が認められた色彩や香りと、負の相関が認められた色彩や香りとは不調和関係にあることが分かった。 以上より、香りと色彩の印象構造が比較的類似しており、同一次元上で捉えることができること、その上で、両者の調和性に関して、ある程度予測が可能であることが示唆された。
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