どのようなカオス力学系のネットワークが情報伝達効率が高いかを決定し、さらにはネットワークが情報効率が高いときに決定される要素力学系の関数系や新しい機能単位としての成分の創出を実現するモデルの提案を行った。 ネットワークを構成する関数を二つのシグモイド関数の合成から作ることで広い関数空間を張ることができる。 steepness parameterと結合パラメーターを調節することで、定値関数、単調増加関数、単調減少関数、シグモイド型関数、単峰関数、二山の関数などが表現される。そこで、種々のパラメーター値をネットワークの各ノードに設定することで、さまざまな関数形からなるヘテロネットワークを構成した。このネットワークに遺伝的アルゴリズムを適用した。遺伝子は関数を決める二つのパラメーター、ノード間の結合パラメーターの組である。このネットワークに外部入力を与える。外部入力はカオス力学系によって生成され、ひとつのノードに入力として付加された。フィットネスランドスケープは時間付き相互情報量で与えた。時間付き相互情報量を各ノードで計算し、各ノードでの外部入力との相互情報量の最大値が大きくなるように進化させる。次の結果を得た。 1.結合定数の値が非常に大きいときは定値関数が進化した。つまり、入力とまったく同じ信号を伝搬するネットワークが進化した。 2.結合定数の値が中間の時、ステップ関数を二つ組み合わせた矩形関数が進化した。これの写像は安定不動点と一過性の大振幅軌道が共存する興奮系である。従って、ニューロンと数学的には同等の性質を持つ写像関数が進化したことになる。 3.結合定数の値が小さい時、類似のステップ関数が選ばれるが、これを写像と見たときには周期解をもつことが多い。すなわち振動型のニューロンが進化したことになる。 フィットネスランドスケープの構成と選択のメカニズムには他の可能性も考えられる。例えば、情報量最大の他に情報伝達スピード最大を選択の条件にすることも可能である。この二つで最終的に選択される関数形は異なるであろうことが期待される。
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