第一に、佐渡における地籍図の作成過程などの資料としての基礎的性格に関する検討を進めた。この成果は、2009年度に報告予定である。同時に、佐渡に関わる様々な歴史資料を再確認する作業を進めた。本年度報告の雑誌論文はその成果である。 ついで、佐渡国中平野に関わる地区の地籍図の遺存および保存状況を旧役場にて確認した上で、撮影作業に際して注意すべき点の洗い出しを行った。その結果、本年度は、旧真野町の地籍図の写真撮影を行い、効率的なデジタルデータ化のために有効なノウハウを蓄積することにつとめ、所期の成果を得た。これを踏まえ、600分の1という大縮尺図である地籍図を効率的に接合し、他の地図と対照させるための方法を検討し、地理情報システム(GIS)のソフトウェアを使用した方法を採用した。明治期地籍図の写真データをトレースして地籍図一枚ごとにベクタデータ化を行った。ベクタデータ化および作製した地籍図のベクタデータの接合については、各種研究プロジェクトの先行事例、実務的手法等を参考に3つの方法を準備し、その有効性を探った。 また、地域社会への成果の還元ということも大きな柱である。本年度については、研究で得られつつある知見を佐渡市の文化的景観に関わる委員としての活動に反映したほか、新潟県から依頼を受けた佐渡相川地区および笹川地区の文化的景観に関する調査にも、本研究で得られつつある知見・ノウハウを有効に活用することができた。さらに、地元説明会や市民向けの講演会などでも、積極的に研究過程や成果について報告を行い、成果の還元をはかった。
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