研究概要 |
広汎性発達障害(Pervasive Developmental Disorder,PDD)は自閉性障害、アスペルガー障害を含む概念で1)対人相互的反応の質的障害、2)コミュニケーションの障害、および3)想像力の障害とそれに基づく行動の障害、が診断の基準となる。PDDは、近年、国内外で社会性の障害として注目をされ、研究報告の数も飛躍的に増大した。臨床場面で経験的に捉えられてきた各種の症状も大規模な調査によって、その数量化が進められている。このような関係者の努力にもかかわらず、その病因、病態は依然不明である。最近では、PDDは、単一の病因を有する疾患ではなく、サブタイプに分けた検討が有用であるという見方も強まっている。近年、PDDの言語発達の障害の背景には聴覚機能障害があるという仮説も提出されている。初年度である本年度自閉性障害やアスペルガー障害の聴覚機能に関する知見を調査し、総説としてまとめた。自閉症の聴覚誘発反応に異常が観察されるが、自閉症の症状よりも、言語能力と関連が深いことがカナダ、フランス等の研究機関から報告されている。したがって、聴覚誘発反応は、1)自閉症のサブタイプの検索、2)遺伝的な要因の検索について有望であることを述べた。また、聴覚誘発反応等の検査は、計測対象の児童は大規模な調査の一部から抽出するほうが、脳波、脳磁場のみを単独で検査するよりも児童のプロフィールが総括的に得られるために有用性が高まることを指摘した。
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