2頭のマカカザルを用いて実験を行った。昨年度実施した行動実験で動物が示したフラクタル図形に対する選好性の強さをもとに、選好性の高い図形を20種類、選好性の低い図形を20種類、中間の図形を30種類選択し、合計70種類のフラクタル図形からなる刺激セットを各サルで作成し、実験で使用した。サルには単純な注視課題を行わせ、モニター中央を注視している間に、70種類のフラクタル図形を疑似ランダムな順序で、0.5秒間呈示し、前頭連合野のニューロンの応答を調べた。ニューロン活動は前頭連合野の眼窩部より記録した。現在までに60個のニューロン活動を記録し、解析をおこなった。その結果、図形に対する選好性の強さによって、視覚刺激に対する応答、視覚刺激呈示後の遅延期間の応答、あるいは、報酬呈示期の応答の強さが変化するニューロンが見出された。選好性の高い図形の呈示時に高い応答を示すものばかりでなく、選好性の低い図形呈示時に高い応答するものも見出された。これらのニューロンの各図形に対する応答を調べたところ、特定の刺激呈示により応答する傾向は見出されなかった。したがって、ニューロンの応答の強さは、図形に対する選好性の強さの違いを表象していると結論できる。このことから、図形に対する選好性の強さの違いによって応答の強さを変化させるニューロンにより、動物のフラクタル図形に対する選好性行動が規定されることが示唆される。今後は、図形に対する選好性の強さにより応答を変化させるニューロン活動が、快情動と関係するかどうかを検討したい。
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