平成21年度は以下の2つの成果を得た。 [1]タンパク質間相互作用によるネットワークと、遺伝子発現データから推定したトランスクリプトームのネットワークを組み合わせ、薬剤が影響を及ぼしているリガンドー受容体から薬効に関与する重要遺伝子までのパスウェイを探索するための統計学的手法を開発した。その基本的なアイデアは、まず、薬剤投与し計測したマイクロアレイ時系列データから、薬剤影響パスウェイをダイナミックベイジアンネットワークを用いて推定する。次に、推定された遺伝子ネットワークから、ハブ遺伝子など、キーになっている遺伝子を同定し、そこにリガンドから受容体を介し4ステップ以内で繋がるタンパク質乾燥後作用によるパスウェイを枚挙する。枚挙されてたパスウェイがアクティブになっているか否かをマイクロアレイデータを用いて、各遺伝子の薬剤投与の発現状態をコントロールデータと比較し検定し、それらをメタアナリシスで統合し、パスウェイのアクティビティとする。その結果、100万以上の候補パスウェイから、23個のアクティブパスウェイを同定した。 [2]高脂血症薬フェノフィブラートは、PPARalphaをターゲットにしていることが知られているが、そのオフターゲットの影響も大きいと言われている。そこで、フェノフィブラートにより誘導されると推定された遺伝子ネットワークの情報と、PPARalphaをノックダウンして計測したマイクロアレイデータを用いて、フェノフィブラートのオフターゲットを同定した。その結果、フェノフィブラートから影響を受ける遺伝子群の約半数はPPARalphaを介した影響であるが、残りはPPARalphaを介さない独立の影響であることを示した。また、オフターゲットの多くを制御している遺伝子GDF15をネットワーク情報から同定した。このGDF15をノックダウンすると、フェノフィブラートと似た影響が細胞に出ることが知られており、ネットワークに基づく薬剤標的遺伝子同定という戦略の将来性を示すことができた。
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