本研究では、応募者が提案したエリア・サンプリングに関わる各種誤差を統計的に検討することで、誤差と標本抽出過程の関連性、そして各種誤差の回避方法を模索することを目的とする。具体的には、エリア・サンプリングの地点抽出、世帯抽出及び個人抽出に関連する誤差を重点的に検討することにより、各種誤差の発生メカニズム、標本抽出過程との関連性を解明し、名簿がない場合の社会調査に適用可能な確率標本抽出法を開発している。 初年度は、既存の調査データを用いて解明したエリア・サンプリングの標本回収率の低さと、回答者の人口統計学的属性の偏りに主眼を置き、標本抽出過程による標本誤差と非標本誤差を重点的に検討してきた。具体的な研究実績は次の通りである。 1)調査地点の抽出に用いた住宅地図と調査で区の実際状況の不一致による誤差を検討し、住宅地図からリストアップされた世帯一覧表とそこに居住している世帯とのズレが世帯抽出に与える影響を明らかにした。 2)記録が残らないため、誕生日法による個人抽出の恣意性は完全に回避できないという問題が確認できたと同時に、標本世帯の通し番号と世帯の成人構成員数を基に発生させた乱数による個人抽出が優れていると考えられる。 3)調査員が標本抽出員を兼ねて、直接標本個人を抽出した場合の訪問時間帯と在宅率との関連性を分析し、誤差を回避する方法を検証すると同時に、実証的な調査計画について検討してきた。 4)標本抽出に伴う誤差の検証を中心的な目的とし、調査項目と質問内容を検討し始めている。
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