研究概要 |
本研究では成魚において外部から心臓が視認可能な透明メダカ(Orizas latipes,See-through)ならびに心臓再生が実証されているゼブラフィッシュ(Danio rerio)を用い、レーザーアブレーション法を中心とした再現性の高い心筋損傷法の開発と、心筋特異的プロモーターの制御下に蛍光分子を発現するトランスジェニック個体の作成による心筋再生の定量的評価系の開発を目標としている。本年度は心筋損傷法の確立とトランスジェニック個体の樹立を試みた。受精後5日目のゼブラフィッシュ稚魚を麻酔下に低融点アガロースに包埋し、フェムト秒レーザーによる心筋損傷と損傷領域の検討、ならびに損傷応答遺伝子の発現の有無について検討を行なった。リアルタイムでの心臓像を確認しながらフェムト秒レーザーの照射条件の検討を行い、平均出力60mWで再現良く心筋に損傷を与えることに成功した。さらに、組織学的解析によりこの条件下で15μm四方の領域に明瞭な損傷を与え、損傷心筋細胞は約5-10個(この発生段階の心臓全体の5-10%程度)であると推定された。一方MsxBなど損傷応答遺伝子は明瞭な発現を認めず、初期形体形成過程における心臓損傷応答が成体のそれと異なるメカニズムによることが示唆された。また、ゼブラフィッシュ心筋特異的プロモーターとして知られるmlc2aの上流領域1.6kbならびにこれに対応するメダカmlc2aの翻訳開始点より上流約1.2kbを用いて心筋特異的に蛍光を発するトランスジェニックメダカの樹立を試みているが、現在までのところ期待されるトランスジェニックラインは単離されていない。このことはメダカとゼブラフィッシュのmlc2a遺伝子の発現制御機構に違いがあることを示唆するものである。
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