本研究では、実験用アカハライモリ(ラボイモリとトランスジェニックイモリ)の大規模な生産・維持技術の確立を目指す。本年度は、1.イモリの養育条件の決定、2.トランスジェニック条件の決定、3. RPE65プロモーター配列の決定、および4.網膜再生関連遺伝子の解析に向けた基礎実験を行った。1においては、32匹の雌から採取した1010個の受精卵から589匹の幼生を得、変態抑制条件下で全長約5cmの個体205匹(生存率34.8%)を飼育中である。養育条件がほぼ整ったことから、さらに4匹の雌から得た252匹の幼生を対象に第2回目の試行を行っている。2については、人工授精による受精卵の採取条件を検討し、実験効率を上げることに成功した。GFPをレポーターとするCAGGsベクターを用いてマイクロインジェクション条件をほぼ決定した。さらにメタロチオネインプロモーターによる条件付発現系の新規導入を試みている。3については、RPE65遺伝子のプロモーター配列の決定に向け、イモリゲノムライブラリーの作製中である。4については、網膜再生におけるFGF経路や再生関連遺伝子の機能解析に本技術を適用するための基盤として、これら遺伝子の発現解析を行った。その結果、網膜色素上皮由来の幹細胞にMusashi-1が発現することが分かった。また、FGF経路については、当初1種類の受容体(FGFR-2)が網膜色素上皮由来の幹細胞に発現すると考えていたが、新たな受容体(FGFR-1)の発現が判明した。FGFシグナルの伝達不全イモリ系統の作出に向けた基礎実験としてそれぞれの受容体の発現パターンを解析した結果、FGFR-2は幹細胞で発現が増加するが、FGFR-1は組織全体に発現することが分かった。
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