本研究では、実験用アカハライモリ(ラボイモリとトランスジェニックイモリ)の大規模な生産・維持技術の確立を目指す。本年度は、1.ラボイモリの養育条件と繁殖条件の決定、2.トランスジェニック条件の決定、3.RPE65プロモーター配列の決定、および4.FGFR機能不全イモリ作製、を目標とした。1においては、8月に32匹の雌から得た589匹の幼生を変態抑制条件下で約1年半飼育した結果、87匹が生存した(生存率14.8%)。全長は3cm~8cmとばらつきが多く、約半数に形態異常がみられた。一方、2月に4匹の雌から得た252匹の幼生を同じ条件で約1年飼育した結果では、88匹が生存し(生存率43.6%)、全長はほぼ5cmとばらつきが少な<、形態異常もほとんど観察されなかった。このことから受精卵の採集時期が生存率や正常な発達に大きく影響すると考えられる。生存率を上げるため引き続き変態抑制条件の検討を行うとともに、大きく成長した個体をラボイモリとしてスクリーニングし、繁殖条件の検討に移る。2については、効率のよいトランスジェニック条件を決定し、GFPイモリ系統を得た。さらにメタロチオネイン・プロモーターを組み込んだコンストラクトを作製し、トランスジェニックによりその有効性の評価を開始した。3についてはイモリゲノムライブラリーからのスクリーニングを開始した。4については、FGFR-2は網膜色素上皮細胞由来の幹細胞で、FGFR-1は組織全体に発現することが分かった。このことは、FGF受容体の機能不全が網膜再生以外にも影響する可能性を暗示している。一方、再生誘導にMEK1/2-ERK1/2経路が関わる可能性が出てきたことから、これらの制御についても検討を開始した。
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