本研究では、実験用アカハライモリ(ラボイモリとトランスジェニックイモリ)の大規模な生産・維持技術の確立を目指す。本年度は、1.ラボイモリの養育条件と繁殖条件の決定、2.トランスジェニック条件の決定、3.RPE65プロモーター配列の決定、および4.FGFR機能不全イモリ作製、を目標とした。1においては、8月に32匹の雌から得た589匹の幼生(第1グループ)を変態抑制条件下で2年間飼育した後、生存した87個体を通常飼育水に移し変態させた。現在、20匹が生存しており、再生能力に異常のないことを確認した。これにより、変態抑制条件下で正常に発生する個体のスクリーニングに成功し、今後これらをラボイモリとして繁殖させる。一方、2月に4匹の雌から得た252匹の幼生(第2グループ)を変態抑制条件下で2年半継続して飼育している。生存率が高く、形態異常もほとんど観察されないため、さらに継続して飼育し、幼生形態のまま繁殖させる。2については、効率のよいトランスジェニック技術を確立し、GFPイモリ系統を得た。さらにメタロチオネイン・プロモーターを組み込んだコンストラクトを作製し、トランスジェニックによりイモリ体内で重金属により活性化されることが分かった。条件付き発現系の1つとして更なる有効性の評価を行う。3については、イモリゲノムライブラリーからの単離に成功し、トランスジェニックにより活性を評価している。4については、網膜色素上皮(RPE)細胞由来の幹細胞で、2種類のFGFR-1アイソフォームと1種類のFGFR-2アイソフォームが発現することが分かった。また、RPE細胞の細胞周期進入や分化転換にMEK1/2-ERK1/2経路の活性が必須であることや、ヘパリンが影響する様々な因子が関わることが明らかになった。今後、トランスジェニック技術と組み合わせて、これらの機能解析を行う。
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