インドネシア産野生キャスタネウスマウスから発見した毛色突然変異遺伝子p^<cas>をC57BL/6J系統に導入して B6.Cg-p^<cas>コンジェニック系統を樹立し維持している過程で、通常の突然変異形質とは異なり加齢に伴って眼・被毛色が黒くなる個体を新たに発見した。本研究では、この新奇突然変異形質をもつ系統を新たに確立する、その遺伝様式と表現型の特徴を明らかにする、また原因遺伝子の探索を行うことを目的とした。本年度は、以下のことを実施した。 (1)遺伝様式の推定と表現型の特徴解析: 昨年度実施した交配実験結果から、エピジェネティックスの可能性は完全には否定できないが、p^<cas>遺伝子の他に常染色体上の劣性修飾遺伝子が関与している可能性が示唆された。そこで、修飾遺伝子座の有無とその染色体上の位置をQTL解析により調査するために、CBA/N系統とB6.Cg-p^<cas>系統間のF2交雑群の作出に着手した。現在までに、F1同士を交配して約20個体のF2世代を得ている。次に、コンジェニックとC57BL/6J系統を用いて眼の光学顕微鏡標本を作製・観察したところ、新奇突然変異個体では通常の突然変異個体とC57BL/6Jよりも色素上皮細胞のメラニン色素顆粒沈着が多くなっていることを明らかにした。 (2)遺伝子レベルの解析: 新奇突然変異個体、通常の突然変異個体と正常のC57BL/6J個体からmRNAを抽出し、RT-PCR法によりp遺伝子の原因遺伝子であるOca2のcDNAを合成した。cDNAの塩基配列を比較した結果、突然変異個体に2つのエクソンの欠失が見られた。その欠失は両突然変異個体間でまったく同じであった。 (3)新たな突然変異系統の確立: コンジェニック系統とC57BL/6J間のF2個体群を基礎集団として、現在、対立遺伝子の固定化を進めている。
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