本けんきゅうでは、血液脳関門を突破し、脳内へ薬(遺伝子)を送達するデリバリーシステムの開発を目的とするが、初年度である本年度は、1. 環状RGDミセルの細胞内動態観察、2. 培養細胞を用いたトランスサイトーシス評価、をそれぞれ行った。 1. 環状RGDミセルの細胞内動態観察ヒト臍帯静脈内皮細胞(HUVEC)に対して、環状RGDペプチドを表層に付与したミセルの細胞内動態を、共焦点顕微鏡を用いて評価したところ、リガンドの付与によりミセルの細胞内動態が変化することが明らかになった。ここで環状RGDペプチドとは、HUVEC上に過剰発現しているαvβ3インテグリンを特異的に認識するペプチドリガンドである。具体的には、RGDリガンド導入により後期エンドソーム・リソソームへの局在量が減少し、カベオソームへの局在量が増加していた。通常高分子ミセルはクラスリン介在型エンドサイトーシスにより細胞に取り込まれるが、RGDミセルはカベオラ介在型エンドサイトーシスを好んで取り込まれていた。この結果より、ミセル表層へのRGDリガンドの付与が、リソソームにおける内包遺伝子の分解を回避し、効果的に血管内皮細胞を透過できる(トランスサイトーシスする)可能性が示唆された。 2. 培養細胞を用いたトランスサイトーシス評価底に数百nm〜数μmの穴が開いたトランスウェルにHUVECを培養して、ミセルのトランスサイトーシス評価を行った。しかしながら、RFDリガンドミセルにかんして、トランスサイトーシスを加速させるような効果は見られなかった。今後は、トランスウエル上のHUVECの培養条件を検討するとともに、使用するミセルの最適化を行う予定である。
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