本研究の目的は両端から分解してゆくこれまでになかった新しい人工神経を開発することであり、これにより長い神経欠損を架橋再生させることが可能になる。このため中央部が分解スピードが遅く両端に行くほど早く分解するという、これまでにない新しい材料の開発を行った。 分解速度にグラディエントを入れた生体内分解性高分子管が作製可能なことを証明して、科学研究費の交付期間内に10cm欠損を補填再建可能な人工神経管を開発することを目指した。 そのため体内で安全に分解する材料として、ポリグリコール酸(PGA)やポリ-L-乳酸(P-L-LA)繊維は外科用縫合糸として50年以上の使用実績があり、これを素材とした神経チューブがこれまで使われているので、安全性の見地から、まずPGA繊維とP-L-LA繊維を複合化したチューブの分解速度の制御から着手した。 現在のPGAチューブは4週間から8週間で分解するが、このチューブの周囲にコーティングしたコラーゲンの分子架橋を中央部から末端にかけて新しい技術を用いてグラディエントを入れることにより、分解速度を制御することを目指した。 熱履歴のかけ方により分解速度が調節できることを確かめた。PGAの繊維は現在、日本では数社が生産しており、以前は大学の研究用には素材を提供してくれていたが、現在は大学からPGA素材の購入をしようとしても、どういう理由か不明であるが販売を拒否するようになっている。日本の大学における基礎研究を進める上で、このような傾向は大きな障害になると思われた。
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