心疾患は、がんに続いて日本人の死因の第2位である。心筋梗塞や狭心症などの虚血性心疾患に苦しむ日本の患者数は16万人を超え、その数は年々増加傾向にある。この治療では、ステントと呼ばれる金属メッシュを血管内に留置して血栓や狭窄を治療する。通常のステント治療では、血栓の形成や再狭窄が生じないよう、抗血栓性薬剤を生涯にわたって飲み続けなくてはならない。本研究では、ステントにECM効果を付与することで周囲の細胞や組織が再生される環境を生み出すことを目的とし、抗血栓性という機能をステントに付与するための内皮化促進ペプチドをスクリーニングした。昨年度までは細胞特異的ペプチド探索法の確立および、内皮細胞・平滑筋細胞・線維芽細胞特異的ペプチドを取得するに至ったが、本年度はさらにこれを内皮前駆細胞・軟骨細胞まで取得候補を広げた。さらに、これらのペプチドをステントにコーティングするための金属への有機分子結合手法を確立した。さらに、これらの得られた有効な細胞特異的ペプチドの中からCAGペプチドを選んでこれをエレクトロスピニング法を用いて小口径血管へと成形し、これを動物に移植することでin vivoでの内皮化の促進効果を確認するまで至った。すなわち本研究は目的であるECMを模倣するペプチドを取得するだけでなく、その動物での有効性までを検証するに至った。本研究はin vivoの研究成果を得た時点で研究として大きな成功を収めたと言え、現在これを論文として投稿している。さらに本研究を通じて株式会社帝人との共同研究がスタートし、企業を含めた産学協同体制まで整うに至った。
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