研究概要 |
本研究では、光を利用したDDSの現状の問題点のひとつである光透過性が乏しい部位でも光応答性を発現しうる薬物キャリアを構築することを目的とする。 本年度は、前年度に合成方法が確立された分岐状高分子であるポリアミドアミン(PAMAM)デンドリマーの部分骨格であるPAMAMデンドロンと生分解性ポリエステルであるポリ-D,L-ラクチド(PDLL)からなるヘッド-テイル型ブロック共重合体およびそのヘッド部であるPAMAMデンドロンの先端へ生体適合性高分子として知られるポリエチレングリコールを導入したブロック共重合体からの特性解析と高分子ミセル形成について検討を行った。温度効果については、PDLL部が生体温度より若干高温の40度付近にガラス転移温度を有することを確認された。また、これらのブロック共重合体から平均粒径150nmの多分子集合体が形成されることが確認された。さらに、PAMAMデンドロン部が目的とした金イオン還元能を示し、530nm付近にプラズモン共鳴を示す金ナノ粒子生成が可能であり、プラズモン共鳴波長の光を照射することで発熱することも確認された。この金ナノ粒子生成は、ブロック共重合体が高分子ミセル(ナノキャリア)を形成している状態でも可能であり、目的とした光照射による金ナノ粒子の発熱、発熱による高分子ミセル内核(PDLL)のガラス転移、内核部の状態変化による内包薬物の放出促進が期待できる材料開発に成功した。
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