生体組織に対する切開・蒸散作用の大きなEr:YAGレーザは、最近、医療の各診療科目に急速にその応用が展開されている。それは中空ファイバにより、Er:YAGレーザ光の安定伝送が可能になったからである。最近、内径100μm超細径中空ファイバの製作について見通しが立ってきた。一方、歯科領域において、根管治療が行われ、歯根の感染部を取り除くためにファイルと呼ばれる外径160μm程度の刃物が用いられている。長く使用したファイルは切れ味が落ち、治療時間が長くなるが、Er:YAGレーザ光を用いれば効率よい切除を保ち、治療時間の短縮が可能となる。それ故、術者にフレンドリーな超細径中空ファイバ型レーザファイルを開発することは重要な課題になっている。 本研究は、平成21年度において以下の研究を行った。 1.超細径先端素子一体型中空ファイバの入射系の構築 テーパ型中空ファイバを用い、超細径中空ファイバの入射系の構築を行った。Er:YAGレーザ装置からの光は現在、標準化されている内径700μmの中空ファイバを使用する必要があるので、内径100μmファイバへの入射効率を高めるために、中空ファイバ型テーパの製作を行い、Er:YAGレーザ光の伝送実験を行った。 2.先端素子の製作法の開発 細径中空ファイバの先端を封止するための簡易な製作法として、ポリシロキサンをディッピング、乾燥するという新しい方法の開発を行った。FT/IRを用いて製作した先端封止部の評価を行った。 3.パイロット光付加型レーザファイルの研究 根管治療の使用を想定した細径中空ファイバのパイロット光(波長635nmの赤色LD)の伝送実験を行った。無機薄膜内装銀細径中空ファイバ(内径0.1mm、長さ10cm)の透過率、曲げ伝送特性(曲げ半径3.5mm、曲げ角90°)を評価した。
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