研究概要 |
造血幹細胞移植療法後に発症する廃用症候群を予防し、移植後患者の社会復帰に対するリハビリテーション(リハ)の効果を明らかにするために、骨髄破壊的造血幹細胞移植療法を受けた13例(骨髄破壊群)と骨髄非破壊的造血幹細胞移植療法13例(骨髄非破壊群)の身体活動量と入院期間との関連性を検討した。全例とも移植療法後の好中球の生着を確認し(骨髄破壊群:平均17日、骨髄非破壊群:平均14日)、ライフコーダーを用いて就寝中を除く日中の身体活動量を測定しながら、クラス10000のクリーンルーム(CR)内で自転車エルゴやステップ昇降などの運動訓練(リハ介入)を実施した。この結果をもとに各群内で身体活動量と入院期間の関連性を検討し、あわせて移植片対宿主病(GVHD)やサイトメガロウイルス(CMV)感染症などの合併症の発症が入院期間に及ぼす影響も調査した。 骨髄破壊群の身体活動量は平均1710歩/日であり骨髄非破壊群の2093歩/日より少なかったが、両群間に有意差はなかった(p=0.90)。一方、入院期間は骨髄破壊群が101日と骨髄非破壊群の71日に比較して有意に長かった(p<0.0001)。 合併症は、骨髄破壊群がGVHD5/13、CMV感染症7/13、骨髄非破壊群がそれぞれ0/13、7/13であり両群間に差はなかったが、骨髄破壊群では合併症の有無にかかわらず入院期間とCR内での身体活動量の間には負の相関が認められた(r=0.71,p=0.0071)。一方、骨髄非破壊群では入院期間も短いためCR内での身体活動量と入院期間の間には明らかな相関関係は認められなかった(r=0.09,p=0.77)。 以上より、強力な前処置による骨髄破壊を伴う造血幹細胞移植療法では、合併症の有無にかかわらず施術後の運動量(日中活動量)が入院期間に対して影響を与えていたことから、術後早期のリハ介入は合併症の発症には影響せず、むしろ早期からリハ介入を行うことで日常の活動量を維持し廃用症候群の発症を予防することが可能となり、結果として安全に社会復帰が早まることが明らかとなった。
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