研究概要 |
我々はこれまで,ラット骨格筋由来のL6筋芽細胞株を用いて研究を行ってきた.そこでまず,ヒト骨格筋筋芽細胞(human skeletal muscle myoblasts; hSMM)(Lonza Walkersville, lnc., Walkersville, MD, USA)を用いて,ヒト筋芽細胞でもラット筋芽細胞と同様に,電気刺激により筋分化が促進されるか検討した.hSMMは,ラットと同じ電気刺激条件では筋分化を促進させることが難しかった.これは,ヒト細胞がラット細胞を比較してサイズが大きいこと,細胞の接着性が弱いこと等の理由が考えられた.そこで,電気刺激条件および培養容器のコーティング条件等を様々組み合わせて検討した.その結果、Typel collagenでコーティングした培養皿を用い,分化誘導培地にウシ胎児血清を低濃度添加して使用すること分化誘導できるようになったさらに,これまでよりもやや強い条件で,hSMMでも電気刺激により筋分化が促進されることが分かった. 次に,ヒト間葉系幹細胞(human mesenchymal stem cells; hMSCs)(Lonza Walkersville, lnc.)を増殖させて筋に分化誘導することを試みた.間葉系幹細胞(mesenchymal stem cells; MSCs)は,中胚様由来の組織へ分化する能力をもつ幹細胞で,骨,軟骨,脂肪に分化誘導する方法は研究が進んでいるが,筋への分化誘導に関する研究は遅れている.我々も,hMSCsを筋芽細胞に分化誘導する条件を検討中である. hSMMを使った実験からヒト細胞でも電気刺激により筋分化が促進されることは分かっているので,hMSCsから筋芽細胞への分化誘導条件が確立すれば,筋の再生医療研究へ応用できると考える.
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