研究概要 |
ラットの坐骨神経に除神経術を行うと下肢の筋は萎縮する。このときの下肢筋は収縮できないため,筋への機械刺激は減少している。そこで,平成20年度は,除神経モデルラットを用いて,骨格筋に加わる機械刺激の減少が,コスタメアにおけるパキシリンの局在に与える影響を調べた。 まず,ラットの坐骨神経を切除する除神経術を施し,筋萎縮モデルラットを作製した。除神経術後3日目には,除神経を行っていないヒラメ筋に比べ,除神経術後3日目のヒラメ筋の筋線維断面積は有意に減少した。次に,除神経術を行っていないヒラメ筋と,除神経術後3日目のヒラメ筋の凍結縦断切片を作製し,コスタメア構造タンパク質であるパキシリン抗体を用いて蛍光免疫染色を施した。除神経を行っていないヒラメ筋では,パキシリン抗体で蛍光染色された部分が,コスタメアが多く存在するZ帯に沿って局在していた。一方,除神経術3日後のヒラメ筋では,パキシリン抗体で蛍光染色された部分が不明瞭で,Z帯に沿って局在していないことがわかった。 この実験結果から,除神経による骨格筋に加わる機械刺激の減少が,コスタメアにおけるパキシリンの局在に影響を及ぼしていると考える。しかし,機械刺激の減少によって変化したパキシリンの局在が,筋萎縮に関わる細胞内情報伝達分子の活性化に影響を与えているのか,さらには機械刺激を加えることでパキシリンの局在が元に戻り,萎縮が抑制されるのかどうかは不明である。今後は,パキシリンの局在変化と細胞内情報伝達分子の活性化の関係や,除神経筋に機械刺激を加えた時のパキシリンの局在や細胞内情報伝達分子の活性化を検討していく必要がある。
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