研究概要 |
本研究では,コスタメア構造の変化が機械刺激による廃用性筋萎縮の抑制に関与しているかどうかを明らかにすることを目的とした。平成20年度には,動物実験を用いて,除神経によって機械刺激が減少するとパキシリンの局在が変化することを明らかにした。しかし,機械刺激の減少によって変化したパキシリンの局在が,筋萎縮に関わる細胞内情報伝達分子の活性化に影響を与えているのかどうかは不明である。平成21年度は,除神経による骨格筋に加わる機械刺激の減少とパキシリンの量やFAKの活性化の関係を調べた。 まず,ラットを対照群と除神経群の2群に分けた。除神経群のラットは,坐骨神経を切除した。対照群には,坐骨神経を露出させた後,切除せず皮膚を縫合するSham手術を行った。除神経術後3日目に,すべてのラットのヒラメ筋を採取し,ウェスタンブロット法を行い,筋内のパキシリン量と,パキシリンと結合することで活性化することが報告されているFAKの活性化を調べた。 その結果,除神経術を施したヒラメ筋のパキシリン量は,対照群のヒラメ筋と有意な差はなかった。一方,除神経群のヒラメ筋のリン酸化FAKの量は,対照群に比べ有意に小さかった。 これまでの研究の結果から,除神経による骨格筋に加わる機械刺激の減少が,コスタメアにおけるパキシリンの局在に影響を及ぼしていると考える。また,コスタメアにおけるパキシリン局在の変化には,パキシリン量の変化は伴わない事が分かった。さらに,パキシリンと結合することで活性化するFAKは,除神経による骨格筋に加わる機械刺激の減少によって,その活性量が低下する事が考えられた。しかし,骨格筋に加わる機械刺激の減少によるパキシリンの局在変化がFAKの活性量を低下させ,その結果,筋萎縮が生じているのかどうかは不明である。本研究で得た結果をもとに,機械刺激の減少とパキシリンの局在変化と筋萎縮の関係を明らかにし,機械刺激による廃用性筋萎縮の抑制効果を明らかにしてく必要があると考える。
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